フライス加工で鏡面仕上げは可能か?

フライス加工で鏡面仕上げは可能か?

Xでマシニングセンタを用いた金属の鏡面加工動画が「AIか本物か」と話題になっていた。(https://x.com/otaka_ss_mold/status/2051991480940826784

一般的に、金属加工における「鏡面仕上げ」は、研削加工やバフ・ラップ研磨といった「研磨」の領域。通常のフライス加工(切削)では表面にカッターマーク(凹凸)が残るため、鏡面には仕上がらない。
超精密設備や専用工具を使えば不可能ではないが、難易度が高く一般的ではない。

そもそも鏡面とは何か?

表面に凹凸がなく、鏡のように物を映し出す状態のこと。

画像引用:https://www.piax.co.jp/mirrorpaint/

表面粗さで表すと、おおよそRa0.1以下の状態を指す。
※Ra0.1とは表面にある凹凸の平均的な高低差が0.1μm(0.0001mm)以下。

フライス加工で鏡面加工ができない理由

通常のフライス加工(切削)では、表面に「カッターマーク」や「パス目」という微細な凹凸が残るため、光が乱反射して鏡面にはならない。

カッターマークとは

カッターマークとは工具の回転によってできる、周期的な微細な削り跡(段差)のこと。刃先の高さに差異があるため発生する。

パス目とは

パス目とは工具が往復・移動した際の「加工経路(パス)の継ぎ目」にできる跡のこと。機械のわずかな傾きや負荷によって、隣り合う列との境界に線状の段差(パス目)が生まれる。

カッターマークの原因と対策(工具)

<原因>
フライス加工においてカッターマークが発生する最大の要因は工具の「刃ブレ」。

<対策>
刃数を1枚にする
最もシンプルかつ確実な刃ブレ対策。すべての削り跡が「同じ1枚の刃」によって作られるため、刃先高さのバラつきそのものが発生しない。
送りを下げる
通常の複数刃工具でも送りを下げることで面粗さが向上する(加工面は一番高い刃先の位置で揃うため)。
刃先高さ調整機能付きの工具を使用
カートリッジ式などで各刃の高さを精密に微調整できる機能を用いて複数刃であっても刃ブレを抑えることができる。
ワイパーインサート(仕上げ刃)を使用
複数ある刃の中に、底面を平らに仕上げるための「ワイパーインサート」を組み込む方法。ワイパーインサートが一番高い刃先となる。

引用:高精度仕上げ面を狙うワイパーインサートとは?【OSG】

カッターマークの原因と対策(被削材特性)

<原因>
カッターマークは、加工する被削材(ワーク)の特性によっても引き起こされる。
アルミやSS材といった「ねばい材料」では、切り屑の一部が工具の刃先に溶着しやすく、構成刃先(溶着)は刃先が実質的に突起した状態になり、特定の刃が想定よりも深くワークを削ってしまう。
一方で、焼入れ鋼など材料が非常に硬いために工具刃先の摩耗が急激に進み、摩耗した刃は削り残しが発生し、カッターマークの原因となる。

<対策>
構成刃先(溶着)への対策として、SS材などの鋼系材料に対してはサーメット、アルミニウム合金に対しては、単結晶ダイヤモンドが効果的。
急激な摩耗が問題となる焼入れ鋼に対しては、cBN(立方晶窒化ホウ素)が有効。
ただし純アルミや耐熱合金など、高性能な工具材質をもってしても対策が困難な被削材も存在する。



まとめ

工具、被削材特性のほかにも、機械主軸の振れ・剛性不足、ワークの剛性不足・クランプ不良、ひずみ、温度変化、むしれ、など加工面に悪影響を及ぼす要因が多い。
個々の原因に対策をして、加工面の品質(面粗さ)をある程度向上させることは十分可能。
しかし、光が綺麗に反射する「鏡面レベル」まで到達させるには、工具選定から機械のメンテナンス、治具の工夫にいたるまで、高度なノウハウと調整(加工条件の最適化)が必要になる。

加工面の品質を高めることは重要だが、切削だけで無理に鏡面を狙う必要はない。切削と研磨と組み合わせるコストバランスを慎重に見極めることが重要。

参考リンク

高精度仕上げ面を狙うワイパーインサートとは?【OSG】
仕上げ面粗さの向上【三菱】
底面加工時のカッターマークが付かない方法【ミスミ】
ワイパーチップによる仕上げ加工【サンドビック】
鏡面切削加工【株式会社中田製作所】
磨きレス切削加工で鏡面を得るためのポイントとは?【株式会社木村製作所】

スタブとショートの違い

切削工具のL/D比による呼び方

ドリルやエンドミルはL/D(工具径に対する加工可能長)によってショートタイプ、ロングタイプ等と呼称される。
この呼称に厳密な基準はなく、各メーカーによって分類基準が異なる。

スタブ(Stub)とショート(Short)の違い

両方とも短い工具を指す。
スタブ(Stub)は「切り株」の意味。短くて太い形状を指す。
ショート(Short)単に「短い」ドリルを指す。

ドリルのL/D比による呼び方

呼び方 L/D比の目安 特徴・用途
スタブ(Stub) 約1.5D 刃長が短く剛性が高い。浅穴加工や高精度加工に最適。
ショート(Short) 約2D スタブよりやや長く、汎用性が高い。浅穴加工に適する。
レギュラー(Regular) 約3~5D 一般的な汎用ドリル。標準的な穴あけ加工に使用される。
ロング(Long) 約5~10D 深穴加工に対応。切りくず排出や冷却が課題になる。
エキストラロング(Extra Long) 10D以上 超深穴加工向け。ガンドリルなどが該当。高精度・高剛性設計が必要。

エンドミルのL/D比による呼び方

呼び方 刃長の目安(工具径Dに対して) 特徴・用途
スタブ(Stub) 約1.5D 非常に短く剛性が高い。高精度・荒加工向き。
ショート(Short) 約2D スタブより長く、汎用性が高い。浅めの加工に適する。
レギュラー(Regular) 約3D 標準的な長さ。多くの加工に対応。
ロング(Long) 約4D 深い溝加工や側面加工に対応。剛性はやや低め。
エキストラロング(Extra Long) 約5D以上 非常に深い加工用。びびり対策が必要。

参考リンク

ショート?スタブ?ロング?刃長によるエンドミルの違い【ツールリメイク】

マシニングセンター「タテガタ」「ヨコガタ」漢字表記の正解は?【雑学】

マシニングセンター「タテガタ」「ヨコガタ」漢字表記の正解は「立形」「横形」。

JISB0105:2012 工作機械―名称に関する用語には、マシニングセンタを「主として回転工具を使用し,フライス削り,中ぐり,穴あけ及びねじ立てを含む複数の切削加工ができ,かつ,加工プログラムに従って工具を自動交換できる数値制御工作機械。注記機械の構造によって,主軸が水平の横形,及び垂直の立て形がある。 」と定義している。
工作機械大手のマザック、DMG、オークマのHPの表記も「立形マシニングセンタ」、「横形マシニングセンタ」。
※立型、縦形、縦型、竪形、竪型、横型、は誤り。

超超微粒子超硬合金とは

超超微粒子超硬合金とは

超超微粒子超硬合金とはJIS規格で定義された規格ではなく、メーカー独自の呼称。
例えば住友電工ハードメタル株式会社では、WC粒径0.5μmの超硬合金を超超微粒と呼称している。

JIS規格

「JIS B 4054:2020 摩耗工具用超硬合金の材種選択基準」によると、超硬合金はWC粒度で4種類(超微粒~超粗粒)に分類される。

超微粒(F)=タングステン粒度1.0μm未満
中粒(M)=タングステン粒度1.0μm以上~2.5μm未満
粗粒(C)=タングステン粒度2.5μm以上~5.0μm未満
超粗粒(U)=タングステン粒度5μm以上

使用分類記号

使用分類記号では、超微粒子超硬合金は「Z種」に分類される。

各メーカーの表記

超超微粒子合金はJIS規格にも使用分類記号にも存在しない。各メーカー独自の呼称である。メーカーの表記を確認すると、粒度1.0μm未満の材種を「微粒」「超微粒」「超超微粒」「ナノ微粒」などと細分化している。

住友電工ハードメタル株式会社の特性表
超超微粒=粒径0.5μm
超微粒=粒径0.7μm
微粒=粒径1.0μm~1.2μm

日本ハードメタル株式会社の特性表
超微粒=粒径0.3μm~0.5μm
微粒=粒径0.7μm

その他メーカーの超々微粒子超硬合金
超々微粒子超硬合金「SFシリーズ」【日本タングステン株式会社】
ナノ微粒超硬合金「フジロイ FS06」【冨士ダイス株式会社】

タングステン粒度の影響

タングステンの粒度が大きければ、靭性が高くなり衝撃性が強くなるが、硬度は低くなる。
タングステンの粒度が細かくなれば、高い抗折力と硬度を得られ、よりシャープエッジな刃先を実現し、耐摩耗性が向上するが、破壊靭性は弱くなる。

参考リンク

超硬の種類~耐摩耗・耐衝撃用超硬?超微粒子超硬?~【株式会社ビット】