超硬合金の分類【基礎知識】

超硬合金の分類

超硬合金の分類には、切削工具用に「ISO使用分類」、耐摩耗工具用に「JIS B 4054」が用いられる。

「ISO使用分類」とは

切削工具用の超硬合金には「ISO使用分類」が用いられることが多い。
「ISO使用分類」は被削材を表すPMK(鋼・ステンレス・鋳物)と硬度を表す数字(10~50)の組み合わせで表示される。
※ISO使用分類と表記されることが多いが、JISでも「JIS B 4053:2013 切削用超硬質工具材料の使用分類及び 呼び記号の付け方」に同一に規定されている。
※使用分類のため、超硬だけでなくコーティング被膜やセラミック等の金属切削工具の分類に広く使われている。

◆参考リンク
被削材(ワーク)の分類【ミスミ】
JIS B 4053:2013 切削用超硬質工具材料の使用分類及び 呼び記号の付け方

「JIS B 4054」とは

摩耗工具用の超硬合金には「JIS B 4054:2020 摩耗工具用超硬合金の材種選択基準」が用いられることが多い。
「JIS B 4054」は結合相を表すVRN(コバルト・ニッケル)と、タングステンの粒度を表すFMCUと、硬さを表す数字(10~80)の組み合わせで表示される。

CIS規格とは

古いメーカーのカタログにCIS規格(超硬工具協会規格)と記載されている場合もあるが、JIS B 4054規格と同一。
参考:CIS 019D-2005(超硬工具協会規格)【みづほロイ】(http://www.mizuho-loy.co.jp/technology/whatis.html

◆参考リンク
JIS分類記号【エバーロイ】
耐磨耗用超硬工具材料【ミスミ】
JIS B 4054:2020 摩耗工具用超硬合金の材種選択基準

メーカーごとの分類

超硬メーカーは各社独自の材種を規定している。
相当材種を探す場合には「ISO使用分類」や「JIS分類」が参考になる。

メーカー別の材種表リンク

三菱マテリアル(切削用)
住友(切削用)
エバーロイ
ニッタンロイ
シルバーロイ
ノトアロイ
サンアロイ
日本特殊陶業
住友(合金素材)
富士ダイス

メーカー各社対照表リンク

メーカー別超硬材種比較一覧(耐摩耗用JIS)
工具材種対応表【三菱マテリアル】
超硬工具材ブランド対照表【竹内型材】
耐磨耗用超硬工具材料【ミスミ】

測定【基礎知識】

測定とは?

「測定」とは、製造物の寸法を一定の基準(単位)に基づいて数値で表すことを意味する。端的に言えば、寸法の測定は測定したい対象物を基準物と比べること。
基準物となる測定機器は、測定の目的や方法、精度に応じて多種多様なものがそろっている。

KEYENCE:測定機ナビ

基本的な測定器具とその使い方

ノギス

ノギスは、長さ(外形)の測定をはじめ、内径や段差などを測ることができる測定器。取扱いが簡単で比較的精度の高い測定が可能であることから、物づくりの現場で広く普及している。

マイクロメータ

対象物をはさみ込んで、その大きさを測定する工具。
ノギスが「0.1mm単位」の測定に使用されるのに対して「0.01mm単位」のより正確な測定が可能。

ハイトゲージ

ハイトゲージは、高さの測定を行なう工具。

ダイヤルゲージ

芯ブレの測定や、円筒の真円度、面の凹凸の確認等が可能。

角度計(プロトラクタ)

角度測定機。「protractor」は英語で分度器の意味。

幾何公差の測定

幾何公差とは?

寸法を制御する「寸法公差」 に対して、 形状を制御するものを 「幾何公差」 と言う。
幾何公差の「幾何」は英語で「ジオメトリー」。三角形・方形・菱形・多角形・円形などの図形や空間の性質のこと。

ミスミ:幾何学公差の種類とその記号

真直度・平面度の測定方法

「真直度」は線の真っ直ぐさを指定するもの。丸棒の反りの許容などに利用される。
「平面度」は面の真っ直ぐさを指定するもの。平板の反りの許容などに利用される。
測定方法は、ダイヤルゲージやハイトゲージを用いて複数箇所を測定。測定値の高低差が真直度(直線測定)、平面度(平面測定)である。

簡易な測定方法としては、定盤の上に測定物を固定しノギスで多点測定、あるいはすきまゲージで確認できる。

ITmedia:寸法を実感する! 測定講座

真円度・円筒度の測定方法

「真円度」は円のまんまるさを指定するもの。
「円筒度」は円のまんまるさ+円筒の真っ直ぐさを指定するもの。

ものづくりWeb:幾何公差
測定には真円度測定機や三次元測定機を使用する。
真円度であればダイヤルゲージでの測定も可能。

平行度

※平面度と平行度の違い
「平面度(Flatness)」が1つの面の平らな度合い(均一性)を示す数値であるのに対し、「平行度(Parallelism)」は2つ以上の平面や直線が、どれだけ平行になっているかを示す数値。(KEYENCE:ココが知りたい! 形状測定

測定には三次元測定機を使用する。
形状によっては定盤にワークを固定し、ハイトゲージを用いて測定することも可能。
測定方法参考:なつおの部屋>平行度

直角度の測定方法

「直角度」は基準となる平面や直線に対してどのくらい正確に直角であるかを指定。

簡易な確認には直角定規(スコヤ)を使用。形状によっては定盤にワークを固定し、ハイトゲージを用いて測定することも可能。

同軸度・同心度の測定方法

「同軸度」「同心度」は2つの円筒の軸が同軸であること (中心点がずれていないということ) を指定。
同軸度と同心度の違いは、同軸度が軸(円筒)で同心度が(断面円の中心)。

測定には三次元測定機を使用する。
同心度であればダイヤルゲージでの測定も可能。

表面粗さ【基礎知識】

表面粗さとは?

表面粗さとは、部品の加工面の状態(凹凸)を表すもの。

表面粗さを示す指標は?

表面粗さを表すパラメータはJIS601(2001年)で定義されている。
実際に用いられる指標は算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)、十点平均粗さ(RzJIS)。
※旧規格RmaxやRyは改正削除されているので古い情報に注意。

規格に関する情報【ミツトヨ】

算術平均粗さ(Ra)

一般的に「算術平均粗さ(Ra)」が面粗さの評価に利用される。
算術平均粗さ(Ra)は粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値。一つの傷が測定値に及ぼす影響が非常に小さくなり、安定した結果が得られる。単位はマイクロメートル(μm)。
001

三角記号(▽▽)

仕上げ記号について、現在JISの推奨はRa記号であるが、機械加工の現場では三角記号が依然使用されている場合も多い。
~:仕上無し
▽:切削荒仕上(≒Ra25)
▽:切削荒仕上(≒Ra12.5)
▽▽:切削仕上(≒Ra6.3)
▽▽:切削仕上(≒Ra3.2)
▽▽▽:切削仕上/研磨仕上(≒Ra1.6)
▽▽▽:切削仕上/研磨仕上(≒Ra0.8)
▽▽▽:切削仕上/研磨仕上(≒Ra0.4)
▽▽▽▽:研磨鏡面仕上(≒Ra0.2)
【参考】算術平均粗さ(Ra)と従来の表記の関係
002

画像で見る表面粗さ

面粗さ標準片(▽~▽▽▽▽)

加工方法により見た目は若干異なる。▽~▽▽▽までの面粗さは目視でおおよそ確認できる。

面粗さ標準片(Ra1.2~Ra46.7:▽~▽▽▽)


Ra25ってどんな感じ?【ITmedia】

面粗さ標準片(Ra1.8~Ra0.1:▽▽▽~▽▽▽▽)


表面粗さ試験片【株式会社昭和製作所】

鏡面研削加工(Ra0.015:▽▽▽▽)

面粗さRz200nm以下になると、鏡のように曇りのない見た目。

樹脂レンズ金型の鏡面研削加工【株式会社ナガセインテグレックス】

動画で見る研磨加工

旋盤→研磨→ラップ仕上げ(▽▽→▽▽▽▽)

平面研削(機械加工:▽▽▽)

ロータリー平面研削(機械加工:▽▽▽)

センターレス研削(機械加工:▽▽▽)

ラッピング(機械加工:▽▽▽▽)

ラッピング(lapping)とは、金属またはガラスの研摩液と混合した遊離砥粒を入れ、比較的やわらかく耐摩耗性の優れた工具(ラップ材)と、被研摩材の間に研摩材を置いて両者間に圧力を与えてすり合わせる方法をいう。

バフ研磨(手加工:▽▽▽▽)

バフ研磨(buffing)とは、金属表面をきれいにする加工法で、バフ磨きともいわれる。布、皮、ゴムなど柔軟性のある素材でできた軟らかいバフに、砥粒を付着させ、このバフを回転させながら工作物に押し当てて表面を磨く加工である。

表面粗さ測定方法

表面粗さは「表面粗さ計」で測定する。
従来、ダイヤモンド製の触針を用いた機種が一般的だったが、半導体などの表面を測定する際に傷をつける恐れがあることから、光学タイプのものが普及している。
平面だけでなく、曲面の測定が可能な機種があるほか、最近では表面の測定データをもとに形状を三次元画像で表示できるものもある。
キーエンス測定器ナビ:CHAPTER 3測定機の種類と特徴

参考リンク

KEYENCE(「粗さ」入門.com )
ものづくりウェブ(表面粗さの書き方)
Wikipedia(表面粗さ)

超硬フラットドリル

フラットドリルとは?

フラットドリルとは、先端角180°のドリル。
主に座ぐり加工に用いられる。
外観はエンドミルに似ているが、正面のみに切れ刃を持つ。
エンドミルのように凸残りが生じず、底面の完全フラット加工が可能。

フラットドリル/汎用ドリル/エンドミルの使い分け

平面への穴あけなら「汎用ドリル」。
非平面の穴あけ加工なら「フラットドリル」。
加工効率は悪いものの汎用的に使用できるのが「ザグリ加工用エンドミル」

フラットドリルのデメリット(汎用ドリルと比較して)

・先端がフラットであるがゆえに、ドリルにかかる軸方向の負荷が大きい。
・ねじれ角が弱いため、切りくず排出性が悪い。

フラットドリルの使い方

傾斜面や、円筒面などの非平面への穴あけが可能。
出口側のバリ抑制にも効果があるため薄板の加工にも効果的。

各メーカー製品の特徴

アクアドリルEXフラット【NACHI】

特長

φ0.2~φ50まで幅広くラインナップ。

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フラットマルチドリル【住友】

特長

フラットマルチドリルMDF型は独自の高剛性刃型設計により、傾斜面や円筒面へ直接、高能率な穴あけ加工やボルト座など平らな穴底が必要な穴あけ加工、抜けバリの低減を実現し、加工時間短縮、工程集約により、部品加工の低コスト化に貢献します。

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超硬フラットドリルADF【OSG】

特長

1本で、多様な加工用途に対応!
傾斜面や曲面への座ぐり加工など多様な用途で使用可能です。

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KDZ【京セラ】

特長

座ぐり加工など多様な加工に対応
独自の新コーティング MEGACOAT NANO EX で、耐摩耗性と耐欠損性を両立
独自形状の大きなチップポケットで優れた切りくず排出性

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ザグリボーラー ZPB【MOLDINO】

特長

・先端角が180°(フラット)により、平面だけでなく傾斜面に座ぐり穴加工できます。
・特殊刃形により、切れ刃の欠けやチッピングを軽減し安定した加工ができます。
・特殊溝形状により、切りくずの排出がスムーズなため、切りくずによるトラブルを解消します。

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MFE【三菱】

特長

1. 新Zシンニングにより、切りくず排出スペースを拡大し、低スラストを実現。
2. 異なる曲率のRを組み合わせた溝形状により、高い切りくず処理性を確保。
3. 切れ刃コーナ部にフラットランドを設け、切れ刃強度を保持。
4. 独自の表面平滑化処理により、切削抵抗を低減し位置精度の向上を実現。

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タイラードリル【ダイジェット工業】

特長

・傾斜面や円筒面への穴あけ・座ぐり加工や交差穴加工において、下穴なしでも安定した加工が可能、バリの発生も少ない。
・エンドミルより広い溝形状のため切り粉処理性に優れ、また先端角は180°完全フラットのためエンドミルでの座ぐり加工に比べ、安定かつ高精度な加工が可能。

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無限フラットドリル MFD【日進工具】

特長

従来のドリルでは困難な斜面や曲面への穴あけが容易になる無限フラットドリル。サイズに合わせて開発したシンニング形状(スパイラルシンニング(φ1~φ2.9)/トリプルシンニング(φ3~φ6))と、ダブルマージン(φ2.6以上)、ロングネック形状の採用で、安定した精度の良い穴あけを実現します。

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→製品情報詳細【カタログ】

参考リンク

フラットドリルと先端角ありのドリル どのように使い分ければよいか?(OSG加工相談FAQ)
フラットな穴底加工の品質安定化とコスト削減を両立する方法(MiSUMi技術情報)
Q&AアクアドリルEXフラット(NACHI)

ヘッド交換式ドリル

ヘッド交換式ドリルとは?

スローアウェイ式ヘッドのドリル。
特徴
・ボディ1つで複数の加工サイズに対応
・ソリッドドリルより高いコストパフォーマンス

ソリッドドリル・チップ交換式との使い分け

参考:【ドリル】チップ・ヘッド交換式ドリルのメリットデメリット(https://toolremake.com/exchangeable-tip-drills/)

各メーカー製品の特徴

マルチドリルSMD型【住友】

特長

独自の放射状セレーション締結により、高精度かつ高強度のヘッド交換ドリルです。
ヘッド交換により容易に刃先を交換でき、生産性、コスト低減および工具管理の簡素化に貢献できます。
また再研磨代を1.5mm~3mm程度確保しており、更なる工具コストの低減が可能です。

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アクアドリルEXVF(不二越)

特長

刃先交換式ドリルで穴あけ精度良好
一体型のチップ方式により、切削バランスに優れた穴あけ精度良好
簡単・確実な取り付け
V型マウント方式により、高精度・高剛性で簡単な取り付けが可能

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スモウカム(イスカル)

特長

歴代のカムドリル・カムドリルジェットを経て、さらに進化を遂げたヘッド交換式ドリル「スモウカム」。
洗練されたヘッドとポケットデザインで、セットアップタイムが不要。高能率で経済的な穴あけ加工を実現します。

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Phoenix PXD【OSG】

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ドリルマイスター(タンガロイ)

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マジックドリル(京セラ)

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W-STAR インサートドリル(三菱)

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TA-EZドリル(ダイジェット)

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