テーパーネックエンドミルとは

テーパーネックエンドミルとは

テーパーネックエンドミルとは、ネック部分がテーパー(先細り)形状になっているエンドミル。ストレートネックよりも剛性が高い。

画像引用:テーパネックエンドミルの有用性【ミスミ】

主な用途

金型の抜き勾配加工
金型には0.5~3°程度の抜き勾配が設定されていることが多く、テーパーネック形状が干渉せずに加工可能。
深いポケット加工
通常のエンドミルでは届かない深さでも、テーパーネックなら高精度で加工可能。
高硬度材の加工
剛性が高いため、硬い材料でも安定した切削が可能。

金型の抜き勾配とは

プラスチック射出成型金型、ダイカスト金型など、金型から製品をスムーズに取り出すために設ける傾斜角度のこと。
金型側面にわずかな傾斜(0.5°〜3°程度)をつけることで、離型抵抗を減らし、スムーズに取り出せるようになる。

テーパーネック形状のサイズ選定


ロングテーパネックボールエンドミル【日進工具】

各メーカー製品の特徴

参考リンク

金型における『抜き勾配』を徹底解説! その重要性を学び、射出成形の不具合を回避!【株式会社関東製作所】

スタブとショートの違い

切削工具のL/D比による呼び方

ドリルやエンドミルはL/D(工具径に対する加工可能長)によってショートタイプ、ロングタイプ等と呼称される。
この呼称に厳密な基準はなく、各メーカーによって分類基準が異なる。

スタブ(Stub)とショート(Short)の違い

両方とも短い工具を指す。
スタブ(Stub)は「切り株」の意味。短くて太い形状を指す。
ショート(Short)単に「短い」ドリルを指す。

ドリルのL/D比による呼び方

呼び方 L/D比の目安 特徴・用途
スタブ(Stub) 約1.5D 刃長が短く剛性が高い。浅穴加工や高精度加工に最適。
ショート(Short) 約2D スタブよりやや長く、汎用性が高い。浅穴加工に適する。
レギュラー(Regular) 約3~5D 一般的な汎用ドリル。標準的な穴あけ加工に使用される。
ロング(Long) 約5~10D 深穴加工に対応。切りくず排出や冷却が課題になる。
エキストラロング(Extra Long) 10D以上 超深穴加工向け。ガンドリルなどが該当。高精度・高剛性設計が必要。

エンドミルのL/D比による呼び方

呼び方 刃長の目安(工具径Dに対して) 特徴・用途
スタブ(Stub) 約1.5D 非常に短く剛性が高い。高精度・荒加工向き。
ショート(Short) 約2D スタブより長く、汎用性が高い。浅めの加工に適する。
レギュラー(Regular) 約3D 標準的な長さ。多くの加工に対応。
ロング(Long) 約4D 深い溝加工や側面加工に対応。剛性はやや低め。
エキストラロング(Extra Long) 約5D以上 非常に深い加工用。びびり対策が必要。

参考リンク

ショート?スタブ?ロング?刃長によるエンドミルの違い【ツールリメイク】

アンダーシャンク工具とは

アンダーシャンク工具とは

アンダーシャンク工具とは、工具径よりもシャンク径が細く設計された切削工具。加工の自由度を高めたり、干渉を避けたりするために使われる構造。「逆段」、「スリムシャンク」、「頭でっかち」、「Reduced Shank(英語圏)」とも呼ばれる。

シャンク径と工具径の関係性のパターン

パターン 特徴 用途例
工具径 = シャンク径
(同径シャンク)
工具径とシャンク径が同じ。保持が簡単で汎用性が高い。 一般的なエンドミル、リーマ
工具径 < シャンク径
(オーバーシャンク)
シャンク径が工具径より太い。剛性が高く、びびりを抑制。 高精度加工、長突き出し
工具径 > シャンク径
(アンダーシャンク)
シャンク径が工具径より細い。干渉回避や深部加工に有効。 金型の立ち壁加工、微細部品加工

アンダーシャンクのメリット

立ち壁加工に最適
壁面に近づいてもシャンクが干渉しないため、垂直面の加工が可能。

シャンク長の変更が容易
突出し長さは必要な絶対最小値に最適化することが重要。ストレートアンダーシャンクはシャンク長を簡単に変更することができる。

アルミ加工との相性良い
アルミ部品は深いポケット形状や立ち壁構造が多いためシャンクを細くして干渉を避ける必要がある。またアルミは切削抵抗が低く、細いシャンクでも剛性が保てるため、アンダーシャンク設計が成立しやすい。

アンダーシャンクのデメリット

剛性が低くなる
シャンク径が細いため、びびり振動が出やすく、切削条件の最適化が必要。
保持力が低下しやすい
シャンク径が細いため、チャックとの接触面積が減り、工具の抜けや振れのリスクが高まる。
標準チャックに合わない
φ4やφ5.5などの非標準径の場合は、汎用チャックで保持できず、専用コレットやアダプタが必要になる。

参考リンク

切削加工の壁【OSG】
ステップ切削とは エンドミル加工 立ち壁加工【OSG】
iMX超硬ホルダの使い分け【三菱】
側面加工時に工具干渉を起こさない方法【ミスミ】
チャックの選択【サンドビック】

不等分割・不等リードエンドミルとは

不等分割・不等リードエンドミルとは

不等リード・不等分割とは、刃のリード角(ねじれ角)と刃の分割配置を不等にして、防振効果を高めたエンドミル。防振エンドミルとも呼ばれ、ビビリ対策として採用される。

不等分割・不等リードエンドミルのメリット

・不等分割:底刃の分割を不等にすることで、振動の位相をずらし周期性を打ち消す。4枚刃の不等刃が一般的(2枚刃や3枚刃の場合は、不等刃にしてしまうと左右のバランスが悪くなってしまい、高速で回転させたときに、振れが出てしまう場合がある)。
・不等リード:同一エンドミルの各切れ刃のねじれ角度を変化させることにより、振動の位相をずらしビビリ振動の抑制が期待できる。

不等分割・不等リードエンドミルのデメリット

・チップポケット(溝)が通常の等刃より小さい箇所があるため、切り屑排出が悪い。
・通常のエンドミルに比べて再研磨に手間がかかる(再研磨価格が高い)。

参考動画

参考リンク

不等リード 不等分割のメリット【ミスミ】
不等刃と不等リードはどう違うの?再研磨屋が解説【ツールリメイク】
不等分割エンドミルと不等リードエンドミルの違いとは?【再研磨.COM】
XALシリーズ【ミスミ】

「タテガタ」「ヨコガタ」漢字表記の正解は?【雑学】

マシニングセンター「タテガタ」「ヨコガタ」漢字表記の正解は「立形」「横形」。

JISB0105:2012 工作機械―名称に関する用語には、マシニングセンタを「主として回転工具を使用し,フライス削り,中ぐり,穴あけ及びねじ立てを含む複数の切削加工ができ,かつ,加工プログラムに従って工具を自動交換できる数値制御工作機械。注記機械の構造によって,主軸が水平の横形,及び垂直の立て形がある。 」と定義している。
工作機械大手のマザック、DMG、オークマのHPの表記も「立形マシニングセンタ」、「横型マシニングセンタ」。
※立型、縦形、縦型、竪形、竪型、横型、は誤り。